ミニバイク耐久奮戦記(準備編)

 我が弱小レーシングチームは性懲りもなく、今年も仙台ハイランドレースウェイで開催される6時間耐久 ミニバイクレースへ参戦する事が、5月の会合で決まってしまった。(ちくしょー、これに参加すると夏休みに 何処にも行けなくなるんだよなぁ。とみんな言いつつも例年の事ながら、わくわくしているクラブ員たちであった)
 冬の間ミニバイクから遠ざかっていたメンバーも走り込みを再開。何とか勝負になりそうなタイムまで乗り慣れて きたのであった。

トラブルトラブルまたトラブルの巻

 さて、ライダーがバイクに慣れてきたところで、バイクのメンテ。エンジンをバラして、パーツを替えて、もっと乗り 込めとばかりに中井インターサーキットへ通う。ところが、キャブレターからガソリンが漏れて止まらない。
タンクの中の錆が、原因だった。(誰だ!タンクバラしたときストレーナーをつけ忘れた奴は! あっ、俺だった)  オーバーフローが治まったと思ったら、今度は走行中何かが漏れている。ガスか?オイルか? 停止すると問題ないのに、走り出すとリアタイヤが滑る事滑る事。雨が降っていたって、こんなには滑らないと いうほどの滑り方。原因はオイル漏れ。でも、どこからかが解らない。うーん、おもいっきり悩んだ。
 ガレージに帰ってきて、もう一度、一から点検していくと、あれ?オイルポンプの取り付け穴を塞いでいたはずの ボルトがない!!!これではギアオイルがかき上げられて、そこからたれてくるのは当たり前。 (誰だ!ここのボルトを外した奴は?犯人は未だに名乗り出てこない。はずかしくって、言えないのだろう。ワタシデハアリマセン ^^;;)
 がたがたとやっていたら、もう6月も終わり。一応トラブルも治まって、タイヤもMBR720SSを履かせて また走り込みを始める。すると、ギャアギャアギャアーと異音を響かせてバイクが止まった。ありゃりゃ、焼き付きだーぁ。 まあ、シリンダーとピストンを替えりゃいいんだから。「良かったね、レース中でなくて、まだ一月もあるさ」と言って、 笑ったのだった。

  誰がいったい仙台行くの?の巻

 「リーン、リーン」その電話は、最悪の事態の幕開けでしかなかった。「もしもし」「まずいよ仙台行けなくなった」 「どうしたの?」「親父が今朝死んだ」
 それは今年必勝を目指すはずの第二ライダーからの電話だった。週末に顔を合わせているメンバーが週の半ばに 全員集合。葬式に出席した後、緊急会議となる。こいつには兄弟がいて、二人で参加の予定だったのだ。 「替わりに誰が行くんだ?」「今年はメンバーが多いからもう旅行の計画を立てて、宿も押さえたから無理だぞ」 「俺は休みをずらして仕事を入れてしまったぞ」と替わりが、見つからない。まあ、二人ぐらいならいなくてもいいや。 いざとなれば、知り合いのおねーさんをヘルパーにしようと決まった。そんなこんなで、がたついている内にもう8月だ。レースまであと三週間。
 「リーン、リーン」うっ、いやな予感。予感は大当たり。なんと当てにしていた残りの二人まで、たて続けに行けなく なってしまった。うちのチームも平均年齢が高くなってきており、みんな会社でそれなりのポストに付きだした。  従って、こんな事態も予想はしていたが、まさかねぇ。実際に起こるとは思ってもいなかった。 残った二人(私と第一ライダー)はこうなると意地である。「どうする?」「行くしかないでしょ!」 「二人じゃタイムの自己集計もできないぞ」「もー、ど素人のねーちゃんでもいいから連れて行くしかないでしょ。 それは良いですが、平沢さん(私の本名)当然ライダーですよ」
当たり前である。まさか6時間一人で走る訳にはいかない。しかしである、今年も監督という名の雑用係だと 思っていたので、バイクにほとんど乗ってないのである。
「まだ2週間あります。毎晩走れますからね。それで十分ですよ」という訳で、仕事を5時で切り上げての、 秦野通いが始まった。

監督が空を飛ぶの卷

 仕事を終わってからの連日の秦野通いである。サーキットは9時までやっているから、上手くいけば毎日2時間 近く乗り込める。計算はそうだが実際は仕事が上手く終わらなかったり、道が混んでいたりで、1時間がやっと。 それに俺にもやる事は色々あるわけで、毎日とはいかなかった。(休み前で仕事が忙しかったんだもの)  それで、すぐに帰ってくれば良いものを、なんだかんだで、家に帰れば、1時2時。睡眠不足も重なり、 今度は俺が、死んでしまうんではないか?と思えるような状態となった。
「これで死んだら過労死かな?」「いや。過遊死でしょう」なんて、冗談も出る始末だった。  そんなとき、練習中に、誤ってコーナーでフロントブレーキを無意識の内にフルロックさせてしまった。 「ヤバイ」と思った瞬間体は空を舞い、路面へ叩きつけられた。「うっ、バイクが上から降ってくるぞ! こりゃ本当に死ぬかな?」と一瞬考えてしまった。
 運良くも(ほんとかなぁ)バイクは1メーターほど斜め後ろに着地。フロントを軸にしてくるっと空中一回転、 テールカウルから着地して、そのまままっすぐ走っていった。「ウルトラCだったよ。でも、今年は終わったと思った」と 見ていた相棒が言っていた(転んだ本人は自分を守るのが精一杯でなーんも解らなかった)
 低速コーナーだったので、ライダーはちょっとした打ち身と擦り傷で助かったが、バイクは重体。 シートカウルがばらばら、シートレール関係が、ぐしゃりと曲がり、見るも無惨な姿となってしまった。
 もう、散々な目にあっている我々である、こんな事ぐらいではへこたれない。シートカウルはリベットで止め ガムテープで補強。フレームは、パイプと、ハンマーそれと根性で、叩き直してしまった。


 がたがたになった、バイクとライダー二人。それに嘘と、費用全額持ちという条件で丸め込んだストップウオッチを 持った事もないおねーさん二人を連れて、我がチームは11日の夜、仙台へと向かった。

準備編   終わり




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